思い出のグリーングリーン・グラス(英国ニューマーケット訪問記)
To: 日没氏
Subject: My Sweet Road, Newmarket
From: Tomo Sakata
Date: Mon, 20 Jan 1997 01:31:26 -0800


  ■□ 日没様

  源一郎君を読み終わりました。枕もとに置いて毎夜少しずつ読みました。
 寝る前に読む本があるとシアワセです、どうもありがとう :-)。

  読みながらいろんなことを思い出してました。僕は聖地ニューマーケッ
 トに行ったことがあるんですよ。3年ほど前の初冬、JCでレガシーが勝っ
 た頃です。

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  真っ暗な雨の宵の中を列車は走り、ついたニューマーケットはこれまた
 真っ暗、駅舎のひとつもないプラットフォームだけの駅でした。ここがニュー
 マーケットかという感慨など何もなし。駅からただひとつ見えた明かりに
 向かって僕と M は雨の中を走りました。その明かりはさいわいホテルで、
 駆け込んだ僕らはふう助かったとロビーにある絵などを見回します。さす
 がに馬の絵ばかり。どれも名のある馬なのだろうか。

  ところがそこには冷え切ったからだを温める風呂がないというのです。
 なんたること。仕方がないのでまた僕たちは、教えられた町のホテルに向
 かって雨の中をテクテクと歩き出しました。回りは住宅街、うっそうとし
 た木々の陰から家々の明かりがちらりちらりと覗きます。車など全く通ら
 ないイギリスの田舎町。これがニューマーケットなのか。

  15 分ほど歩いたところで町に入りました。最初に見つかったホテルにさっ
 そく宿を取ります。ここもやっぱり馬の絵がたくさん。

  古い西洋風の部屋に通され、ふうと息をついてバスタブにお湯をためて
 いると、ホテルのパンフレットを見ていた M が言いました。「これは、マ
 ムが読んでた古いイギリス小説に出てきたホテルよ!」。げげ、そんなに由
 緒あるところなの? そうよきっとマムが口惜しがるわと大喜びの M。
 「かつて馬のセリに来た貴族が泊まった宿なのよ」。げげ、そうなの。そ
 んなすごい宿にもみえないけど。ともあれ寝る場所が見つかってよかった
 よかった、はははと僕は風呂につかります。だいたいそのヨーロッパ貧乏
 旅行でバスタブのある部屋に泊まれたのは、その宿が初めてであった。やっ
 ぱり風呂がなければだめである、ふいーとか言いながら体を温めました。

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  次の朝雨のやんだ町に出てみると、そこはおとぎ話のような小さな町で
 した。メインストリート一本、それに軒を並べる銀行や商店やレストラン。
 それだけの町。そして回りを調教の丘が囲んでいるのです。......ナイス
 すぎる :-)。

  店のウィンドウを眺めながらぶらぶらすると、すぐに町の反対側につい
 てしまいました。こんなに小さな町だったのか。そして角を右に折れると.
 ....TV で何度も見たあのニューマーケットの丘。じーんと感動する私、うっ
 うっ (;_;)。まあラブリイな丘ね、でもこれがそんなに特別なものなのか
 しらと笑う M。

  歩いているうちに体が冷えてしまい、僕らは近くのカフェに入りました。
 ミルクティーを注文。安そうなカップになみなみとつがれて出てきた、ミ
 ルクがたっぷりのお茶がうまい。それをすすりながら、僕は M にニューマー
 ケットのことを説明しました。といっても日本の一般競馬ファンが知るこ
 とと、Dフランシスの小説の話だけですけど。「......だからだね、きっ
 と歴史に残る名馬の調教師なども、ここにこうして座ってお茶などを飲ん
 でいたはずなのだよ」と。

  暖まった僕らは、もう一度丘に向かいます。あ、こんどは馬がいる! 10
 頭ほどの馬たちと、かれらにまたがった攻馬手たちが、遠くから丘をゆっ
 くりと降りてきます。感動。きっと朝駆けあがって、今降りてきたところ
 なんだろう。あまりにも美しい光景に、彼らが降りてくるのを何十分も僕
 は見つめていました。彼らが僕の前を通って厩舎のあるほう───裏通り
 の民家がそのまま厩舎という感じだった───へ向かう時、僕はカメラを
 向けて写真を撮りました。分かっているよという顔で微笑む攻馬手たち。

  競馬の聖都ニューマーケットまで出かけて(ロンドンの友人を訪ねるつ
 いでに寄ったんですが)、馬に関する体験はたったそれだけでした。冬場
 は競馬もやってないし、唯一の観光施設競・馬博物館も閉まってるのです。
 ここも閉館中だった国立種馬場の案内を見ると、全く知らない馬ばかり。
 本当にいい馬はみな日本とケンタッキーへ行ってしまったのだなあと実感
 しました。

  でもニューマーケットがこんな、時間が 300 年前のままのんびり流れて
 いるかのようにのどかな町であったことにいたく満足した僕らは、競馬の
 あるシーズンにまた再び来たいねえと話すのでした。そうだ、競馬狂の父
 親に、この町の消印の押された郵便で馬の絵の複製を送ってあげよう。そ
 う思いついた僕たちは画廊に入り、有名な画家のサラブレッド画を父と母
 に一枚ずつ選び出しました。今僕らがいる場所が分かるかい父さん。信じ
 られないよ。

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  それではまた、本を読むうちに思い出したことなどをまた書きます :-)。


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