【Journal】寿限無じゅげむ

■ 00/10/01(日) 12:25:47 □ シドニーが終わる
 昨夜閉会式を見るともなく見ていたのだが、延々と豪ミュージシャンコンサー トが続き合間にスピーチが入るだけで、なにをやってるのかよく分からなかっ た。豪に特徴のないポップミュージシャンやゴージャスなブロンド女がたくさ んいるのは分かったが、それをたいへんな中継費用をかけて世界中の人が見る ことになにがしかの意義があるのだろうか。またなぜに「ダンシングクイーン」 なのであろうか(※)。つまらなくなって最後まで見ていられず、閉会式クラ イマックスが盛り上がったのかどうかもよく分からないままオリンピックは終 わってしまった。  ※ Mに聞くと、シドニーには有名なゲイパレードがあって、その名物が ああいうキンキラ衣装のゲイ面々によるアバ踊りなんだとのこと。 ----------------------  午後ポートコキットラムの住宅地を見に行く。こうした郊外の住宅地はやっ ぱりどこも同じで、元々人が住んでなかった辺ぴな土地をひたすら家家家と埋 めていった場所。日曜の昼下がり、猫以外動くもののないそういう場所を車で ぐるりと回っているだけで、ここに住むのかなーという気持ちが湧いてくる。 このさびしさはなぜなんだろうとずっとそれを考えていた。『ご町内』という コミュニティ意識が湧かないからか。しかし日本に住んでいたって町内会に所 属してたわけじゃないしなあ(八幡は町内会参加が義務づけられていたような のだが、うちは得体の知れない、日本語を話すかどうかも怪しい二人組として パスされていたらしい)。  ともあれ飯を食おうと丘から降りてポートコキットラムダウンタウンに出て みると、思ったよりもはるかに多くのいろんな店が並んだ小ぎれいな町がそこ にあった。心底ほっとする。俺にも正確な理由はどうしても分からないのだが、 ひと気のない、家だけしかない場所に住むのはいやだ。ポートコキットラムで あればこのあたり、つまりなにごとにも便利で、わしらと一緒に住むかもしれ ないサイバーMKセーネンが使う電車が通る駅がある場所に住みたいよ。
■ 00/10/02(月) 13:48:04 □ 二度目のワクチン
 今日は萌の二度目のワクチンの日。Dr.Bの前ですばらしくよい子でいてく れた。生まれたときから萌を見ている Dr.Bもうれしげ。健康優良、体重の伸 びは徐々に標準に近づいているが、身長は依然標準カーブのはるか上を走行中 であった。 ----------------------  帰ってきてしばらく萌は問題なかったのだが、俺たちが晩飯を食ってるとき に機嫌が悪くなり始め、まあ食べ終わるまでちょっと待っていてくれよと適当 にいなしていたら火が点いたように泣き出した。これが今までのあらゆる泣き 方と違う泣き方で、明らかに萌自身が今まで経験のない不快感に苦しんでいる。 処方されていた鎮静剤を飲ませMと交替で必死にあやすも楽にはならず、1時 間余後にやっと疲れ果てて眠ってくれた。ぷはー。前回は多少泣いただけでど うってことはなかったのだが、予防接種二度目にして本格的な泣き反応が出た のである。  Mの解釈に依れば、前回はまだ2ヶ月で、様々な苦痛を選別して苦しがるほ ど神経系が発達してなかったのだろうとのこと。今回は成長した分「この苦し みはナニ? なんなの? なんとかして!」と子供ながらにパニックになった のではないか。たしかにそんな感じであった。ベイビーが病気になるとこんな にもつらいのかとまざまざと思い知らされるような悲痛な泣き方で、俺もMも かわいそうで居たたまれない気持ちだった。最近萌が泣くのはフラストレーショ ンによる怒り泣き(腹が減ったのにミルク女が来ないとか、歩きたいのに移動 役男が持ち上げないとか、眠いのに眠れないなど)がほとんどなのでよけいに、 苦痛泣きには一家三人が全員まいったのであった。 ----------------------  Japan - USA 戦を見、2週間遅れで全試合を見終わった。ふぅぅぅ。 ■ まとめ 楢崎 知らなかったが、左脚キックまで含めてすべてがうまいのであった、 中澤 DFは技ではなく気力だと示していた。今は下手なのに相当な大物に なるのではないかと感じさせる4試合だった 森岡 シュアでよい 中田コ グラウンダーのパスはチーム1美しい、守備力やや弱いか 松田 よく分からない、秋田などのほうが上だろう 宮本 コンパクトなライン操作はすばらしいが、守備力が不明 明神 ほぼ文句なし、4試合でさらにうまくなったのに驚き 稲本 ほぼ文句なし、やや波があるか 中村 文句なし、フィジカル弱いがどうしたと強気になってほしい 三浦 絶対前に進まないドリブルは、いくら華麗でも役に立たないなあ 酒井 私好み 中田 パスのスランプを超えてほしい 高原 文句なし、はずしたシュートをすべて枠に入れていれば今すぐ 欧州レベルだろう 柳沢 やりたいことは分かったがもうあまり代表では見たくなし
■ 00/10/04(水) 23:09:13 □ パーフェクト萌
 今日は萌の機嫌が数週間振りのよさで、ニコニコで喋りまくりだった。俺た ちがかなり離れたところに立っていても目で確認することができるようになり、 こちらに向かって笑いかけるという高精細モード。しかもブランコにのべ1時 間以上もハッピーなまま座っていてくれた。おまけに、これはいけるかもしれ んとボトルでミルクを与えてみると(ひと月以上拒絶中)、狙いどおりすんな り空にしてくれた。やったあ。完璧なベイビーに一歩一歩近づいている。はず。 ----------------------  日本で USA-Japan 戦を見て「あの審判はなんだ」と怒りのメールを送って きた熱血カナダ人RYに今日返事を書いていて、日本選手たちのあのおとなし さにはやっぱり問題があるなあと思った。トルシエは就任直後に「こわい顔を しろ」と選手たちに命じたわけだが、不評だったのかいつの間にかそういうベー シックレベルのことはやらなくなってしまった。  あの US 戦ではありとあらゆるコンタクトに対して誰一人文句をいわなかっ たが、やはり度が過ぎる(US 選手たちは必死なだけで悪気はなかったのだろ うが)コンタクトやラフプレーにはきちんと抗議して、レフの判断がどうであ れ俺たちは怒っているのだと示すべきだった。黙っていて心身に疲労をためて いくのは自分たちなのである。クールな態度で、技は切れまくって勝つという ところに日本選手の美意識があるのは想像できるが、技が足りない部分は態度 で補ってほしい。
■ 00/10/05(木) 23:44:39 □ モバチューン
 こないだバックアップ電池が切れたのを直してから久々にモバギアへ愛情が 戻っており、あれこれ環境をチューンアップする。結局無駄ファイルを消した くらいであったが、DoDiary がより使いやすくなったのでよし。DoDiary はシ ンプルな DOS ツールなのに本当に面白いプログラムである。普通だったら書 き捨てているスケジュールやらのメモが、メモリーとしてたまっていくのが面 白い。使い始めた2年前からの出来事は京都旅行のことなどをはじめ詳細に記 録が残っているし、えらい昔のことなんかも覚え書きとして入力してみたりす ると楽しい。  という流れで昔の日記ノートを読み出してしまう。「来月末まで3万でしの がねばならん、バンドでスタジオに入ったら飯も食えん」とか「峠でUターン 禁止で切符を切られた。また金がなくなると涙が出る。怪我でレースに出られ ないスペンサーも今こんな気持ちなのだろう」など、ビンボだったせいで金の ことがよく書いてあって笑う。
■ 00/10/06(金) 13:42:05 □ コーミ屋の秘密
 明るくなるまで 86〜92 年(吉祥寺時代)の日記を読んでしまった。ほとん ど忘れていることばかりでドキドキする。「コーミ屋のかわいい子と毎日目が 合い、彼女がにっこり笑ってくれてよろしい」とあるが、なんだそれは! コー ミ屋とはいったいなんだ! その子の顔はおろかコーミ屋とはなにかすら思い 出せない。吉祥寺のパン屋かなにかかな、うーむ。いや実に面白い。将来俺が 死んだ後萌がこれを読んだりするだろうか。そうだとすると恥ずかしいが、ま あ死んでいれば関係あるまい。  これだけ古いものを読んでいると自分の性格が悪くてびっくりする。やたら に人を批判してるではないか感じ悪い奴だな。やっぱり 20 代前半なんて誰で もこんな風に攻撃的なんだろうか。それから東京時代を通じてやたらにひどい 風邪をひいている。外食と弁当ばかりでよほど栄養状態が悪かったようだ。た しかに野菜量などはひどかったかもしれない。
■ 00/10/07(土) 12:34:59 □ 人生は上々だ
 夜昔の日記を毎日読んでいるせいで、RZ に乗っている夢を見た。  しかしざーっと日記を読んでみると、俺の人生はラッキーだ。日記を読んで いるだけでうれしさが甦り、ドキドキしてくるような出来事がたくさんある。 バンド、バイク、MTB、競馬、友だちや女の子たち。うちの母さんは「おまえ は本当に運のいい子だ(感謝して低頭せよ)」とよくいうが、その通りかもし れぬ。 ----------------------  今日萌は一日基本的に機嫌はよかったのだが、遊んでやらないと怒ってわめ き手におえず、Mも俺もクタクタ。それになにかが思い通りにいかないととん でもない高ピッチでスクリームするのにもまいる。この声もそうだが、こない だから怒るとこの子はめちゃ恐い顔をするのだ。きれいな顔に険が走り、ぜん ぜん制御がかかってない生の感情が出るからなのか、ギクっとするほど恐い顔 になる。その度にうわわヒステリックな子に育つのではないかとびびるのであ る。まあ子供はすべからくヒステリックなので仕方もあるまいが。
■ 00/10/08(日) 12:26:59 □ 寿限無じゅげむ
 昨夜は疲れていたので、いつもの鍋皿洗い・ミルク関連の殺菌・おむつ洗い という夜中の1時間労働が実にこたえた。ひうー。サンクスギビングデー、萌 を泣かせずにBR家に来ることに成功。萌はまあまあの機嫌だが、大量のイト コたちに囲まれ喧騒に圧倒されている。  ご飯を食べ一眠りした後は萌の機嫌もよくなり、皆に笑顔を振りまいてくれ た。やっと人々にナイスな笑顔を見てもらえてほっとする。  今日の皆の話題はうちの引越しについてが多かったのだが、Mが「トモは 郊外の住宅地に住みたくないっていうのよ」というと、皆がなんでやねんと不 思議がっていた。「たぶん日本はいろんな家や商店や、果ては工場から畑まで が混じった環境が普通だから、まったく家だけだと奇妙に感じるんじゃないか しら」とMが皆に説明を試みるのだが、俺自身にもハテまったく理由は分か らない。「自分でもなぜか分からんのだよ、その居心地悪さが」と俺がいうと、 Mは育った環境なんだから仕方がないわといっていた。そうなのかな。この Ladner くらいなら郊外といってもちゃんとした町があるからいいんだけど。  ―――あそうか、『町』がなくても『車』があれば人はどこにでも住めると いう、その北米的なモータライゼーション依存住環境になじめないのか。そう か。Ladner なら現にMKやKVが歩いたりバスで用を足しているわけだが、P .Coq などの山の中じゃすべては車頼りだもんね。町に住むか、町への公共交 通があるところに住むのが当たり前の人生を送ってきた俺には、車なんぞにそ んなに人生の命綱を握られていいのかという素朴な反感が生じているのだ。今 後はこの反感が合理的なものなのか、それとも単なるバカなのかを俺が自分で 考えればよい。食う寝るところに住むところ、寿限無じゅげむ。 ----------------------  日記読み直しシリーズからの流れで、初めてカナダに来てハリファックスの 大学付属コースで英語を勉強していたときの受講ノートまで6年ぶりに初めて 読んでしまった。めっちゃきつい2ヶ月模擬大学受講コースで、毎日教師宛て に練習メールを書かされたのだが、これが文法や言い回しは間違っていてもい ちいち内容が面白い(WC94 やらストーンズニューアルバム評やら、ハリファッ クス生活のあれこれ)。カナダに来て5ヶ月の一介の ESL 生徒がこれだけの ことを毎日書いていたんだから、KR先生は驚きと共に楽しんでいただろうな と思う。実際カナダバンドのレコードを貸してくれたり、家に呼んでくれたり したし。  が、最終的に卒論として書いた「カナダと日本:モザイクと水彩画」という のがゼンゼンまるっきり駄目で(笑)、カルチャーショックに落ち込んでいる 生徒が自己弁護にもがいているさましか浮かんでこない。なんの結論も出てお らず、これをMやKR先生が論文になってないと駄目出ししたのは当たり前で あった。あのときは必死に「日本のあいまい文化は悪くない」と書こうとして いたのだが、何年も経ってみればそんなことは当たり前のことで、それをわざ わざ書くあたりがカルチャーショック症状であり、たかだか5ヶ月の体験でそ れを書ききろうとしたあたりに無理があった。だがしかしそんなこともあって、 今の俺ができてるんだろうな。  今引越しについて彼我の違いを考えているのも、あの頃の俺と同じようなも のかもしれない。また5年経って振り替えれば、あああの頃は若かったと思う やもしれぬ。

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