僕らが旅に出る理由はいまだ不明
Subject: 僕らが旅に出る理由はいまだ不明
From: Tomo Sakata 
Date: Wed, 01 Jan 1997 14:43:28 -0800


  ■□ あけましておめでとう、Tさん

  大晦日にTさんのロック・テープが届いたよ。なにかタイミングといい、
 手紙の内容といい、うるうるでした (笑)。

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 1) あいのうた -- Yen Town Band
  チャラっていう人はエレクトリックな人なのかと思ってたんだけど、こ
 んな素朴な音楽性の人なんだね。WOWWOW でチャーやどんとと共演してたと
 きの、あんまり自信なさげな顔を思い出す。

 2) アジアの純真 -- パフィー
  げげ、ELO だ、なんだこりゃ \(^o^)/?! あ、これが奥田民夫がプロ
 デュースしたってやつかー、噂は聞いてたよ。声がやや下品なところが非
 常にいいね、何度も聴きたくなってしまう :-)。奥さんにも聴かせてみま
 す───なにかを思い出させないかね? 『?』 70 年代の? 『あ、
 ELO だわ!』 正解 :-)。

 3) 大人になれば
  小沢健二だ。いいね。「この 1〜3 は今年もっともヒットした曲でもあ
 る」とのことだけど、共通してるのはちっともうまくないということだなー、
 素晴らしい (笑)。ビートルズが出てもピストルズが出ても最後に笑うのは
 ホイットニー・ヒューストンじゃ、大企業のキャピタリズムみたいでやり
 切れないからね。誇らしいぞ日本ポップス。

  4) 僕らが旅に出る理由
  中でも小沢健二という人は特に、歌がはげしく頼りないところが第一の
 特徴だと私は思う。その下手なところが、またメッセージが革命的でもな
 いところが、そしてコード/メロディももっとよくできそうなのにしてな
 いところがいい。プリンス(と呼ばれた男)が音楽にはまだ未開の地があ
 るわワーハハハとブルドーザで突き進んでいく一方で、残されたキャタピ
 ラの跡に花が咲いている。

  日本にはやはりワビサビの心が生きてるんではないでしょうか (笑)。江
 戸時代の、なにで食ってるのか不明な俳人や落語の与太郎の血が日本人に
 は連綿と残ってるんじゃないかしら。このテープを聞いてるとそんな気が
 します。

 5) Still Crazy After Those Years -- S&G
 「あんな年月のあとでもまだクレイジー」、いいタイトルだな。これは再
 結成ものかな? ポール・サイモンという人はこちらの音楽好きの間で、
 なんというか偉大な政治家のように敬愛されているという印象を持ってい
 る。彼の努力により僻地に道路がひかれました。彼こそが、アメリカ人に
 最も詩心を植え付けた人なんじゃないだろうか。

 6) Good Vibration 〜 Let Him Run Wild
  ビーチボーイズといえば村上春樹なんだけど(そんなことないか)、彼
 は Internet でも活動してるんだよね。エッセイを公開したり、読者の
 Email に公開で答えたり。才能がある人ほどネットでは親切になるような
 気がする、なんとなく。彼の新作なんて当然私は読んでないわけなんだけ
 ど、いつかメールを書いてみようかな。

  ちなみにMさんはビーチボーイズは USA 脳天気音楽の象徴のように思っ
 てるらしくて、嫌いだそうだ。まあまあそう言わずに (笑)。

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 □ Patti Smith
  お、気持ちいいカッティング。パティスミスなんて「パンクロックの興
 亡」という歴史ものにしかカナダでは登場しないんですが、日本ではこう
 して現役で聞いてる人がいるんだから驚くぞ :-)。──げげ! これギター
 がトム・ヴァーラインなの? 彼がギターで日本でやるのかな? すんげー!

 □ スライダーズ
 「虹を見たかい」。おお、なんか GS 風なスライダーズだ......というか
 完全に GS サウンドではないか (笑)。村越さんもやっぱり GS 世代なんだ
 ろうか、知らなかったな。

  いいなあ、スライダーズ。なんかスライダーズを聞くと思うんだけど、
 奴らは超名曲を書かなくてもやっていけるペース感というか、そのへんが
 俺たちとは違うんだと思う。『ジータはもっとていねいに演奏すればよかっ
 た』ってTさんは書いてるけど、「レアール」「罪と罰」「ギャンブルマ
 インド」と突き進んで行く以外に方法を知らず、最後には力尽きてしまっ
 た俺たちとスライダーズとは違うんだと思う。

  Hはスライダーズみたいにドライブかけないでやっていける男だけど
 (キノコ採ってないでちゃんと音楽やってもらいたい・笑)、HKと俺たち
 にはどうしたってそんな風にはできなかったよね。マニファクチャーズの
 ときも、見ても一緒にやってもつらかったなー。この違いがすなわち出来
 上る音楽の善し悪しでは当然ないんだけど、バンドの寿命という点にはモ
 ロに反映してしまうね。誰もがスライダーズみたいに音楽を続けられたら
 ハッピーだけど、それは無理。私は爆発力と長距離能力を併せ持ったミッ
 クジャガーを尊敬するよ。

  東京という町が難しすぎるのかもしれないね、生きて行くだけで。その
 町で誰だってまじめに生きてるんだ、というのが小沢健二の言いたいこと
 なのかもしれない。

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  TさんとIがオヤブンとやってるというのを聞いて、驚きとともにうれ
 しさを感じてます。あの軽音の俺たちの上の世代というのはみんな不幸だっ
 たような気がするよ、なんか、時代が悪かったみたいな (笑)。だって彼ら
 は一つもまじなバンドが作れなかったんだもんね。いまこうしてTさんの
 おかげでオヤブンがまたドラムを叩けるというのは、ひとつのハピネスだ
 と思うよ(他で叩いてたかもしれないけど、性格的にそれはなかったんじゃ
 ないかと想像)。

  Iが音楽的野心を抱いているそうだけど、あいつって年を取ったのか取っ
 てないのかよく分かんないところがあるね (笑)。レコード会社へアタック
 とか言われてもピンとこないけど、そうして外へ開いて行こうと考えるメ
 ンバーがいるというのは貴重ですね、ほんと。

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 「めちゃ忙しかった、こうして年を取っていくのだろうか」ということで
 すけど、カナダでヒマでも「こうして年を取っていくのだろうか」という
 悲しみは強いよ。Tさんは家族を抱えて俺よりはるかにたいへんなんだけ
 ど、たとえ二人きりでも一人では生きていけないというつらさはあるよね。
 ホーム。それに値するものなんだけれど。こうして生活だけを刻んで年を
 取っていくのかと考えることがあるよ。僕らが旅に出る理由はいまだ不明。

  でもまあ普段は二人ともハッピーなんだけどさ。新年早々ふさぎこんで
 もいられないぜ、マン。......しかし何故アジアでは新年はこう特別なん
 だろう? カナダじゃ新年早々、TV の深夜番組でどよーんと重たい模擬裁
 判番組をやってたぞ (笑)。門も取れてないうちからそんなに不毛な言い争
 いを見せないでくれよまったく。アジアのお正月が恋しい。......そうい
 えばパフィーって歌詞がよく聞き取れないんだけど、「ア〜ジアっ!」って
 ところがリアルだよね。つくりものじゃない質感がある。

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  今年のバンクーバーは寒くって、こないだは何十年振りという大雪が降
 りました。50cm くらいなんだけど、バンクーバーはなにしろ雨の国、雪が
 東京よりも少ないところなので驚き。非常事態宣言が発せられて大騒ぎだっ
 たけど、真っ白なクリスマスはきれいだったよ。

  ところが今朝起きてみたら一気に気温が上がって、50cm の雪がほとんど
 跡形もなく消えてしまってた。わるい夢を見ているような 1997 年の夜明け。

  今年OKは須坂で正月を過ごしているらしいけど、東京のみんなはどん
 なお正月をしたのかな。昔みたいに立川神社や深大寺に行った人はいるの
 だろうか。それじゃまた、暇をみてメールなど送ってください。バイ。
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 │とも│
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