電子本をめぐる冒険記

To: 電子書店ポシブル堂掲示版 サカタ@バンクーバー 投稿日: 2001/01/06(土) 10:08 霧隠才蔵 − 石野真琴 カナダのバンクーバーに住むサカタと申します。ポシブル堂より、石野真琴著 「霧隠才蔵」をいただき読みました。著者石野真琴氏とはいったい何者かとい う驚きと共に、たいへん楽しく読めたのでご報告します。 石野真琴氏とはいったい何者なりや。私にとって歴史ものの楽しみは、出来事 の解釈とそれにまつわる人々の動きがわたあめのようにふくらんでいく様であ り、そのふくらみには著者の物知り度(調査力)&考え込む力がものをいうと 思います。そこの部分で石野氏は、読者をまったくがっかりさせません。この 作品には、たとえば『なぜAがBと言ったのかが分からない』など著述上のア ラはありますが、それは編集と校正がいれば直る物理的な問題。過去に読まれ た有名な同題材(真田関連)と読み比べても、そこにあるのはなにがしかの差 ではなく、味わいの違いだけなのです。したがって勝負は面白いか否かだけで あり、そして「霧隠才蔵」は面白い。主人公才蔵には、実を言えばさほどの魅 力を感じなかったのですが、それでもこの小説は面白い。あっぱれです。 石野真琴氏とはいったい何者なりや。彼のほかの作品がこれからポシブル堂で 読めるのでしょうか。楽しみです。
To: 冬佳彰氏掲示版 気持ちがガサガサしてくる江戸の闇 サカタ@バンクーバー 2001/01/22 (月) 11:07 ポシブル堂に転載 (?) された「時代小説集 − 江戸の闇」から、「水底の星々」 を読ませていただきました。肩が凝るような思いでモニターを見詰め過ごす数 時間。読んでいて気持ちがガサガサしてくるような人物にたくさん出会いまし た。さほどの分量ではないのに、読後「ああなにか美しくやさしくかよわく日 の当たる無難なものが読みたい」と思いました。それほどに、この物語には力 を感じたのであります。めくるめく読書体験。 では、ご飯を食べ仕事を済ませ日の当たるものを読んで気を取り直したら、引 き続き冬佳彰さんの次の作品を激読みします。ありがとうございました。 ---------------------- To: 冬佳彰氏掲示版 Re^2: 気持ちがガサガサしてくる江戸の闇 サカタ@バンクーバー 2001/01/23 (火) 04:37 冬佳彰氏作品を読んでいて(あれから仕事の遅れを気にしつつ2作読了)、最 初に感じた印象が確かになってきています。気持ちがガサガサする。骨に来る。 これは昔誰かを読んだときの気持ちに似ている。それは誰かと問うならば、英 国のディックフランシスなのであります。 こちらに置かれたものはもちろん皆読ませていただくつもりなのですが、でき ましたらば冬佳彰作品研究者の便宜のために、「小説の周辺」ページに掲載作 品完成の時期だとか作者あと書き的なコメントを書いていただけると、より楽 しみが増すなと思います。小説の周辺情報として。ではまた。 ---------------------- To: 冬佳彰氏掲示版 『泥と雪』感想ほか サカタ@バンクーバー 2001/02/01 (木) 17:11 昨夜ちょっとだけ『泥と雪』を読んで寝ようと思いつつ、読み出したら止めら れず最後まで読んでしまいました。寝不足で働く雨のバンクーバー。 『泥と雪』は、これまで読んだ冬佳彰作品で一番好きになりました。主人公の 少年を皆が好きになっていく、その気持ちが自分の気持ちと同じで。胸を打た れました。ああ。 一番と言ったからにはランキングを載せねばなるまい。 泥と雪 藁の巣 老鴬 見た男 水底の星々 と思ったけれど、順位はつけられないですね。まだ読んでない連作もあるし。 上のものが、特に胸に残っています。『泥と雪』は、いつかまた読もう。そう いう物語です。
最近読んだポシブル堂収録作品 From: Tomohisa Sakata To: 電子本ML Date: Wed, 31 Jan 2001 23:44:52 -0800 -------- ■□ サカタ@バンクーバーと申します ● 最近読んだポシブル堂収録作品 渓水氏『国立幻獣保護観察院』。感想を募集とのことですがメールアドレスな どが分からないため、こちらに書きます。楽しそうなファンタジーで、全編読 みたいところです。姫剣士の登場っぷりがアニメっぽくて、アニメ世代ではな い私はそういう部分にはのめり込めないのですが、ドラクエ・ウィザードリィ を昔プレイしたときのワクワク感が甦ってきました。 同じくファンタジックで楽しい小笠原智広氏『いつかこの橋で祝杯を』。こち らにもアニメ感を感じます。あるいはこっち(カナダ)でやってる、奇想天外 女剣士ドラマ「ジーナ」(サカタ妻が愛視聴)のにおいか。 横川公彦氏『悪源太義平』。横川氏の作品は『安土山幻影』と『本能寺余聞』 も読んだのですが、登場人物を知らない分『義平』の方が知識の泉となり楽し かったです。逆に、歴史上の有名人物を書くというのは難しいのだろうなと想 像。日本史を勉強したくなりました。改訂版が出ましたが、どこが変わったの でしょう? たなべひろあき氏『こまちに乗ったよ』。世に「鉄ちゃん」は多いそうですが、 ポシブル堂主人もそうだったのかなとニヤニヤしつつ紀行文を眺めました。ち なみにカナダにはカメラを持って走る「鉄ちゃん」はいないそうですが、大陸 横断鉄道はやはり国民の憧れです。飛行機より高く、しかも時間がどえらくか かるので、誰もがそうは乗れないのですね。しかし車窓から見る光景は想像す るだにすばらしい、私もいつかはきっと乗ってみたいと思うのです。 泉井小太郎・音座マリカ氏『青い旅人』。すてき。リンクをたどって見つけた ふくろうのビートルズ詩集が最高でした。 domel 氏『覚醒』『真贋』『美晴の夏』。どれも見知らぬ世界に思いをはせる ことができる、充実した小説でありました。短い中に推理の味もやや込められ た物語上仕方がないのか、盛り上がってくると過去に起きたことの説明部分が 長くなってくる気がします。そこで読むのにやや疲れを感じます。説明せずに 伝える方法はあるのだろうかと頭をひねってみても、フィクションを作れない 散文的な頭の私にはイマジネーションのはるか外。これだけの世界を形づくれ る domel 氏の才能というのは、うらやむべきものがあります。 LUNA CAT 氏『T-Time よ、道を誤るな』ほか全収録作品&氏の Web 収録作品。 そうか、そうだったのかと膝を打つ快感評論群でありました。青空文庫とはこ うした方々に支えられていたのですね。 「(T-Time について) 本になった時点で完成なのではなく、その後もかたちを 変えることができる。読むに際して、読者も本のかたちを決めることに参加で きる。私は、これは画期的に凄いと思った」 ―――ここでヒザをバシバシと叩いたのですが、惜しむらくは T-Time の動作 であります。各 ttz 本を読みたい形にきれいに整えて、ヨシと読み出し快適快 適、が翌日に同じ ttz を開くとその自分の設定がサッパリ消えてしまうんです よね(※)。ボイジャーさんに苦情をいうと、「それは本を作った方のセキュ リティ設定で変更不能になっているのだ」とのお答え。ああそうか、やっぱり 作者はデザインした通りに読んでほしいのかな.....とうなづくものもあるので すが、やっぱり革命的自主性を私は追い求めたい。これはボイジャーさんに努 力していただいて、『表示変更は次回も反映され、【だがしかし】作者の制作 したデザインにはコマンド 1 つでいつでも戻せる』という造りにしていただき たい。  ※ [設定の保存] コマンドで、表示設定を別ファイルに保存するという手は ありますが、これもドラッグ&ドロップなどが必要で面倒。 そんな嵐のバンクーバー読書日々です。
Re: 最近読んだポシブル堂収録作品 From: Tomohisa Sakata To: 電子本ML Date: Fri, 2 Feb 2001 00:56:10 -0800 Thanks to: 『覚醒』『真贋』『美晴の夏』作者 domel さん --------   ■□ カナダのサカタです /~~ "domel" san wrote: >>■ 過去に起きたことの説明部分が長くなってくる…… >  実は、いつも書きながら気になっていたのが、仰るような点でした。サカタさ > んが読まれた中には『神紋』が入っていないようですが(別に読んで欲しいとい > う意味ではありません……)、あの作品に至っては、解説の繰り返しがしつこく > 出てきます。僕は著す側ですので、物語の背景や歴史上の重要なポイント等は把 > 握していますが、それを読まれる方が果たしてどこまで読みきってくれるのか、 > という不安は常にありました。  今読んでます。おっしゃる通り、ローマ帝国の興亡解説部分なんかはやっぱ り、長いですね。問題は―――書物一般の問題ですが―――、作者はあるポイ ントをスキップするとつじつまが合わないから書き込まざるを得ない、しかし 読者はそのポイントの細かいところにまで注意を払いたくはないというズレが あるときに生じるみたいですね。  また、そのポイントを流し読みしても本の楽しみに変わりはないのか、そこ を精読しないと読む価値がないのかは、読書中の読者には分からない。そこが 自然に分かる造りになっていれば、読者は無意識に読む速度と精度を自分に合 わせて調整すると思うんですけど。僕は、ここは読み流しても自分にとっては かまわないなと感じる部分が本にあれば、そうしています。 ----------------------  話は全然変わるんですが、Final Fantasy Tactics という騎士や魔法が出て くる TV ゲームがあって、かなり人気のあるこれを僕はプレイしたことがある んですが、最後までストーリーが理解できなかったのです。登場人物が非常に 多く、その相関関係や伏線が複雑で、王家がなんたらかんたらで騎士団の政略 がどうのこうのとゲーム中いろいろ説明セリフは出てきたんですが、結局まる で分からないまま終わってしまいました (こんなことをこの ML に書いていて いいのかと思いつつ書いてます、すいません)。  あれはやはり、ユーザーによってまったく異なるランダムスピードで進むゲー ムというものに、製作側の自己耽溺的壮大なストーリーを押し込んだせいで、 『スーパー出来の悪い電子本』となっていたのではないかと今僕は思うわけで す。だから物語に入り込めなく、理解できなかったのだろうと (T-Time で読 んだらけっこういいストーリーだったりして・笑)。つまり、『読者は本の読 み方(速度と精度)を自分に合うように調整するものである、それができない と読みづらさを感じる』ということの、極端な例だったように思うわけですね。 ----------------------  読みやすい書物とは無駄がなく簡潔な姿をしているか、でなければ読者が速 度と精度を操りやすいような機能的な形をしているんじゃないかなと思います。 ですから、僕は小説を書いたことがないので技術的なことはぜんぜん分からず 抽象的なハナシなのですけれど、 > うね。あそこまでくどくどと書く必要は無いのでしょうか……それが僕の現在の > 疑問、というか学びたい点でもあります。これは、今後の勉強のためにも、出来 > れば多くの方からご意見を伺いたいと思います。  文章にその機能性を持たせることが可能ならば、どれだけ多く書いても大丈 夫なんじゃないでしょうか。そこが書き手のガッツか技術か魂か愛情かあるい は別のなにがしか、の見せ所なのではないかと想像するのです。
Re: 最近読んだポシブル堂収録作品 From: Tomohisa Sakata To: 電子本ML Date: Sat, 03 Feb 2001 01:52:43 -0800 Thanks to: domel さん、「ふくろうのビートルズ」マネージャー泉井さん --------   ■□ カナダのサカタです  『神紋』を読ませていただきましたよ domel さん。おもしろかった です。説明は多かったですがそこは駆け足でおおよそを概観しつつ、パ ルテノンの風に乗って読みました。ここそこでああして風が吹いたのが、 読書の帆をはらませたのでしょう。 ==== ◆ ========== ◆ ========== ◆ ===== /~~ In < Re: 最近読んだポシブル堂収録作品> , kotaro izui san wrote: > Owl-Beatles のマネージャー、泉井です。(笑) > 小さな森で解散もせずに彼らは頑張っています。 >   …こう見えてもカナダにもファンがいるんだぜ。 >   …そのうちバンクーバーの森で公演があるかもな。 > などと、彼らも大いに喜んで、あらぬ夢想に走っています。  森のブライアン・エプスタインが腕を揮えば、叶わない野望はないことでしょ う :-)。ブライアン泉井さんの作品は、電子本にとてもマッチしていますね。 CRT モニターのキラキラしたホワイトが、音座マリカさんの塑像(?)たちを くっきりと浮かび上がらせて、美しいです。ドラマーが叩く「どこ・ここ・そ こ」といった音たち (「Jazz Musician」) も、スネアドラムの皮のようなホ ワイトの上で乾いたいい音がしています。あの像たちを手にとっていじくりま わせたら幸せな気持ちになれそうですが、それがかなわない遠くの僕たちにも、 気持ちよさは伝わってきます。マウスのカーソルでグリグリとなでてみたくな ります(すると T-Time がページをめくってしまうので注意)。
紙の本とデジタル本の物理比較 From: Tomohisa Sakata To: 電子本ML Organization: Vancouver Independent Thanks to: 『T-Time よ、道を誤るな』筆者 LUNA CAT さん --------   ■□ カナダのサカタです /~~ In < 最近読んだ....> , Fujimoto Atsuko san wrote: > デジタルの本というのは、だいたいにおいて、紙の本よりも、全体を > 把握しづらいものです。「この作者は、いったい何を言いたいんだ?」 > といらだって読むのをやめてしまう確率は、デジタルのほうが高いの > ではなかろうかと思います。 > このあたり、誰か本格的に研究してくれないものでしょうかね。  私が今朝ほどから研究いたしました。T-Time 本と手元の文庫本を比べてみ ますと、 T-Time 25X22=550 字 (15'CRT 800x600 最大画面、18pt、縦書き) 文庫 40×18=720 字 (1ページ)  と文庫の方が情報量は多いのですが、新しいページをめくってそこに文字が 多めに詰まっている場合に「うわ詰まってるな」とひるむ感覚は、モニター上 の方が大きいのは誰もが気付く通り。これを私は、視覚的な問題ではないかと 捉え考えてみました。 ----------------------  日本語というのは漢字かなカナが混じっているため、登山者が挑む岩肌に適 度な窪みや出っ張りが散在するかのように、小休止とよじ登りのリズムを取り 易い造りだと思います。一面アルファベット、または漢字のみの書き物に比べ て文章をぱっと俯瞰したときに、およその山容も模様のように掴みやすい (模様の黒っぽい部分には漢字熟語が含まれているな、など)。が、それでも 大休止できるテラスがないと容易に力は尽きてしまうもので、たとえば私は改 行が少ないページはメディアがなんであっても疲れます。  モニターで文章を読む場合、文庫本を手に取って読むときに比べて横への視 線の移動が大きくなりますが、それゆえに自分の目がどの行を追っているのか 迷ってしまうことがよくあります。文字が多く改行が少ないパラグラフでは、 「テラス」が足りないうえにこの横移動の難易度が加わるため、内容を理解す るのに努力を要する度合いが増すのを感じます。 ----------------------  そこで実験開始。T-Time を文庫本の大きさ (全画面の半分) と文字サイズ (11pt) に調整。収まる文字量は、まったく同じ 550 字です。ふむ。文字品質 は当然印刷に適わないので読みづらいですが、このコンパクトさはなんだか情 報が把握しやすい感じがする。これは目線を大きく動かす前にページが終わる ことと、そしてもう1つの効果のためだと気が付きました。ページの左右端が これだけ近いと、自分の目がそのエッジにサポートされて道に迷わない。  ならば。この文庫本サイズのままフォントを見やすい 18pt に戻してみると。 .....おおプリティな、超美麗なパームトップ PC という雰囲気でいい感じ。 なんだ、今まで最大画面でばかり読んできましたが、単に画面を小さくすれば よかったのであろうか? しかしこれでは情報量が貧弱すぎ、ページめくりが 煩雑すぎる。 ---------------------- ┏━━━━┓━━━━┓ などといろいろやってみた結果、この文庫本サイズ ┃||||||||┃||||||||┃を左右にこうして並べるのが私には一番見やすいとの ┃||||||||┃||||||||┃結論となりました。これだと最終的な視点移動距離は ┃||||||||┃||||||||┃最大画面と同じですが、『中綴じ』部分が物理的なテ ┃||||||||┃||||||||┃ラスとなり、さらに常に視点の左右近辺に『エッジ』 ┗━━━━┛━━━━┛があって視線をサポートしているため、どんな文章で T-Time2 T-Time1 も目が迷うことが皆無なのです。その分確実に目が楽 になります。  もちろん左右で同じ本を開いても、連動してページをめくってくれるわけで はないので実用にはならないのですが(徒労泣き)、T-Time が今後この『縦 書きの横二段組み』をサポートしてくれれば、ほぼ同等の効果が得られると考 えられます。現在は横長のモニターではあまり用のなさそうな、縦書き上下段 組みしかないのが残念。 ---------------------- 【まとめ】  結局トラッドな本の見開きと同じにするのが一番見やすいわい、と研究する までもない凡庸な報告となってしまいました。本が中綴じになっているのは紙 を束ねるという機能だけでなく、こうして目を休ませ、登山者の背中を叩く役 割もあったのだなと、T-Time から学んだ冬の一日でした。『縦書きの横二段 組み』をサポートしてください、ボイジャーさん。
『古代のナガ』の感想 投稿者:サカタ@バンクーバー 2001/02/08(Thu) 09:06:58 『古代のナガ』を読ませていただきました。おもしろかったです。ファンタジー が好きな人が書くものと、ファンタジックな感性を持つ人が書くものは、微妙 に肌合いが違うのだと思いました(両者を兼ねた場合ももちろんあるでしょう が)。後者であろうと思われる『ナガ』には、どの場面にも自然なちからが働 いていて気持ちがよいのです。たとえば空を飛ぶことは、そのちからによって 自然なことなのです。 出てくる人々や鬼のそれぞれに実在感のある魅力を感じられるのは、作者様 (※注)の人柄を反映しているのでしょう。興味が湧いて Web ページを眺めて みれば、出てくるわ出てくるわのファンタジックなご趣味の数々(縄文土器の 制作!)。それらと作品を直接結び付けるほど作者様を知ることはできなくと も、なるほどなあと納得するものがあります。それではまた。『イピ・ユーム』 と『アトシス』もこれから読ませていただきます。 (※注)『ナガ』と短編のすべてを読んでから Web ページをざっと見渡したの ですが、驚くなかれこちらの Web 主のお名前がどうしても分かりません。

目次へ(index)