SYMPATHY FOR 井崎脩五郎 & ウイニングチケット('93春)
      もう少し、あと少しでダービーです。今年は久々にさまざまな声援が飛び
    かいそうですね。前でしっかりリアルシャダイ産駒、末脚に懸けるストレッ
    チランナーたち、そしてレースの鍵を握るビワとドージマなどなど。応援に
    力がこもるメンバーがそろってます。

      皆様気付かれてるでしょうが井崎脩五郎氏が、『ダービーではドージマム
    テキに思い切り逃げて欲しい』と、耳にタコができるほどくどく何度も発言
    しております。ハイペースでウイニングチケットに全能力を発揮してほしい
    と。別にドージマはチケットのために走るのではないわけで、関係者が怒る
    んじゃないかしらとちょっと心配になるほどに。

      おととしの夏、僕は北海道牧場見学ドリーム旅行に行きました。静内の町
    で、まるでひょんなことから藤原牧場の場長様と知り合うことができ、寛大
    に見学を許していただきました。若く理想に燃えたすばらしい方で、牧場の
    馬たちをみんな見せていただけたのです。アタマがくらくらするほど幸せな
    体験でした。

      『これが伊藤雄二先生に一番気に入っていただいてるんです。同期の中で
    いちばんきかん気ですね。ホントきかないです(笑)。』。そう案内の方が誇
    らしげに紹介されたその馬は、仔馬ながらにきつい目をした憎たらしくてか
    わいいやつでした。牧場名トニーパワー、当時2歳のウイニングチケットそ
    の馬でした。

      なんともいえない表情でこちらを見やるチケットを思い出します。いい顔。
    涼しく不敵なまなざしの、誇りたかき凱旋門賞馬の仔。まだ子供のくせに。

      初勝利を上げた時点で僕は彼のデビューに気がつきました。おおいい名前
    がついたな、よしよし、これで三冠はいただいた(宣言)。てな感じで楽しみ
    にしていたら、本当に快進撃が始まってしまったのです。どうしよう。ビワ
    より強いかもしれん。これはエライこと。

      ですがまるで実感が湧きません。あまりに苦もなく勝ち進んでいくので、
    応援のしがいがないわけです。弥生賞を勝った時点で、これはもはやおたお
    たする必要もない、皐月賞はビワハヤヒデ以外には負けないと確信しました。
    抜けた能力で他馬を相手にしない傲慢さを快く感じました。牧場で見たチケ
    ットの顔を思い浮かべました。

      ところが思いもよらぬ完敗。あまりに予想外だったせいで、僕は自分で思
    っていた以上のダメージを受けました。胸がいたみました。いったいお前は
    どういう馬なんだ。分からなくなってしまった。───そしてそれから例の
    井崎氏の、やけくそぎみのドージマ発言(笑)が始まったわけです。嬉しいけ
    れど、いったいどうしちゃったんでしょうか井崎氏は。

      前から思っていたのですが、あの方はとてつもなく頑固なロマンチストな
    んでしょうね。出目やデータを駆使している(笑)ようなふりをして、じつは
    いつも勝たせたい馬を発表してるだけ。そして彼の勝たせたい馬とはすなわ
    ち、彼が信じる一番強い馬なのでしょう。逆にデータを超える強さの馬を見
    たがっているとも言えます。いちばん強い馬を見たい。いちばん素晴らしい
    レースが見たい。そういう愛情が今まさに、井崎氏をつき動かしているのだ
    と僕は想像します。そしてそれは僕もまったく同じことなのです。

      その井崎氏が一番つよい、あるいはもっとも能力が高いと思っているのが、
    ウイニングチケットなのでしょう。同じ気持ちです。はたして氏の言うよう
    に、ペースが速くなればチケットが力を発揮できるのかはなんとも言えませ
    んが。・・・・・・正直に言って、どうして彼が皐月賞を負けたのか、僕にはちっ
    とも分からないのです。

          今僕が思っているのはチケット、聞いてくれ。競馬だから勝てなく
        ても文句は言わない。だけど皐月賞みたいなレースはがっくりくるよ。
        どんなレースになっても最後まで、お前の脚を見せてほしいのだ。

      願わくば今年のダービーは。直線ビワたちが最後の脚を伸ばし、リアルシ
    ャダイ勢が本年度代表産駒の座をめぐって一線に首を並べ、そしてチケット
    ・ナリタタイシン・マイシンザンたちが力の限り追い込んでくる。───そ
    んな胸おどりのどの枯れるようなダービーを見たいものだと夢みています。
    そして僕は、あのやさしい藤原牧場に、祝電を打ってみたいのです。

                             93/05/26 (Wed) PM 7:45  サカタ トモヒサ

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