カナダ人が旅に出る理由
To: サカタ弟
Subject: カナダ人が旅に出る理由
From: Tomo Sakata
Date: Mon, 21 Apr 1997 23:14:18 -0700


  ■□ BR家引っ越し手伝い記

│ こちらの近況はだね、こちらでも引っ越しがあるのだ。BR家がまた引っ
│越すことになって明日手伝いに行く。2年で3軒めだぜ。なんかあのうち
│は、よりよいところが見つかるとほいほいと引っ越すのだ。海のヤドカリ
│のようだ。
│
│ あそこの2兄弟の上のMKはもう高校一年なのだが、なんとはじめて彼
│女ができたのだそうで、今その話で当家は持ち切りである。相手の子は日
│本人移民の子なんだって。やはり日本とはなにかとつながりのある家柄な
│のだろうか。

  というわけで、昨日BR家の引っ越しをして筋肉痛の兄である。今度の
 BR家はモダンな集合住宅の中の一棟で、日本みたいだった。すごく広く
 てきれいだけど、家賃を聞いたらこれも日本並みだった。計理士になった
 SRの収入がいいのだろうか。

  MKをバイクの後ろに乗せてちょっと走って話したのだが、「彼女が日
 本人なわけ?」と聞くと「ただの友だちさ」とぶっきらぼうに奴はいうの
 だった。わはは (^o^)。その子は父が英国人、母が日本人で、フランス語
 まで喋るんだって。お前がMKに会ったときはまだ身長 160cm くらいだっ
 たと思うけど、もう 175cm 以上あるよ。すごいでかい青年になりそうだ。
 KVはあまり変わりなく、小さなボーイのままだけど。

  引っ越し用にSTが借りてきたトラックが映画撮影用の死体輸送車とい
 うとんでもない代物で、運転席は戦車のようだった。KVの友だちのとこ
 ろへ用があってその車で寄ったんだけど、ガキどもが「すげえ! なにこ
 れ!」と騒いでおった。「これは死体輸送車なのである」と俺が言うと、
 「死体! クール!」とガキどもは興奮しておった。ばかめ。

  しかしMと高速に乗って片道数十分走ったんだけど、アメリカンバイク
 の二人乗りで高速は風圧地獄だよ。苦しくて 90km/h 以上は出せん。低い
 ハンドルとカウルがほしい。パワーのあるエンジンもほしい。そっちに残
 したTZRがつくづく恋しかった。TZRなら 120km/h くらいで何時間で
 も走ってられるもんね。

  鈴鹿GPは今年もなかなか盛り上がったようだし、サッカーはすごい新
 人や外国人選手が出てきてるそうで、春だなあ。天皇賞をぶっつけで勝て
 るのかローレル。


              ==== ◆ ========== ◆ ========== ◆ =====

  ■□ バンクーバーアイランド旅行記

  旅行は元気なLDの小さなマツダに乗っていったのだ。車内音楽はキン
 クスさ。バンクーバーからフェリーで1時間半+ドライブ4時間のバンクー
 バーアイランド、ロングビーチ。

  例によって俺の目にはバンクーバー近郊とあまり変わりないように見え
 たんだけど、さすがに世界的に有名な島なので見どころは多かった。もの
 すごく雨の多い島で、樹齢 300〜800 年のレインフォレストが有名なのだ。
 そこは富士山にそっくりでよかったよ。冬にきたストームのせいで巨大樹
 のなんと 1/3 が倒れてしまったそうで、実際折れて倒れた木がひどく多かっ
 たのが残念。

  まだ雪の残る山間部を抜けて、大雨の中ビーチにつき、ゴアテックスで
 身を固めてビーチを歩く。ゴアテックスの性能はすごいが、下半身がずぶ
 ぬれだ。しかしもともと海を見ることに興味がないせいもあるけど、Mと
 LDが大雨の中きゃっほうとビーチを駆け回り、「きれいね!」と言うのを
 聞いても、俺はハァまことにとしか言いようがないのだった。水が冷たく
 て泳げない、見るだけの海じゃあなー。お前たちがいないと誰も釣りもし
 ないしね (笑)。


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  二日目は晴れ。朝イチでゴム長靴を購入して、あちこちの浜と磯を歩い
 た。歩いた歩いた、もうやだよというまで歩いた。
You can walk to the island  有名なロングビーチは長さはともかく、ウルトラ遠浅のビーチの幅が楽 しかった。水際まで数百mもなだらかに広がるビーチを、あちこちから湧 きだす水が無数の川となって流れているんだよ。

 沖の小島までビーチがつ ながっちゃってるところもある。文章で伝えることができないんだが、面 白い光景だった。磯で貝などを突っついて歩くのも楽しくて、そういうのも子供 の頃以来だったな。


【右上が歩いて渡れる小島
(後述)】


  バンクーバー生まれのLDはここが本当に好きなようで、あまりの熱
 狂に圧倒されたよ。「日本から帰ってきてここに来たときに、I love
 Canada! ってつくづく思ったのよ」。......いったい彼女は日本でなにを
 見たのだろうか、この海が日本の自然よりそれほど美しいだろうかと、ビー
 チをじっと見つめて俺は考えてしまうのだった。

  LDがああ言ってたけど、君も日本の自然は楽しめなかったのかねと
 Mに質問。「そんなことないわよ。自然は世界中どこでもきれいよ。で
 も日本はどこに行っても観光化されて、人とチープな商店だらけじゃない」。
 まあそうだね。それでもいいところはいいと俺は思うんだけど、君たちは
 俗さが我慢できないわけね。「たとえばこのビーチにたくさん人がいたら
 台無しだわよ」。

  なるほどなあ。1時間の移動でだいたい手に入りそうな風景を、こうも
 地の果てまで追い求め、カナダ人が旅に出る理由が分かったよ。ヒトの多
 少が場所の価値を大きく左右するのだ。カナダ人が日本のことをいうとき
 にはヒトが多すぎるという感想が絶対出てくるしね。

  Mも、すばらしい景色だけどまあ北西部カナダならどこへ行ってもこう
 いう風景は見られるだろう、と言っていた。「どうしてここだけがそれほ
 ど人気なのかは分からないけど、やっぱりこの遠浅のビーチが楽しいから
 じゃない?」。それはいえるね、楽しいよね。


              ==== ◆ ========== ◆ ========== ◆ =====

  次の日、MとLDはゴムボートで鯨見物&露天風呂。俺は鯨はノバスコ
 シアですげえ奴をもう見たし、露天風呂も嫌いなボート乗りを我慢するほ
 どの魅力は感じなかったのでパスした。二人をハーバーに降ろし、彼女ら
 がゾディアックという強力ゴムボートで出港していくのを見送る。時折シャ
 ワーが来るものの、空には暖かい日が差してよい日より。いい鯨が訪れま
 すようにと願いを込めて手を振った。きっとすばらしいオルカが見られる
 ことだろう。こうして一人港に残るのは絵柄としてはさびしいけど、一日
 好きなことだけして過ごせるのだから実はめちゃハッピーである :-)。

  自由を楽しみながら鯨見物の町 Tofino を歩く。いろいろ世話になって
 るアウトドアガール・LDに手頃なビクトリノックスのナイフを買ってあ
 げようと思って探したのだが、見つからず。だいたい商店が5軒くらいし
 かないのだよ。全店をチェックし、ネイティブの民芸品店を覗いて品物の
 美しさに驚き、それで町は見おわってしまった。ほんとに小さな町だ。


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  それから蟹を手に入れるために走る。魚屋は一軒もなく、スーパーのシー
 フードセクションには貧しい切り身しか売ってない。港町ってそういうも
 のなんだろうか。金を出して魚を買う人なんかいないのかな。

  あちこち巡ってようやくフレッシュクラブを分けてくれるボート屋を発
 見。ひとつ $10 で二つ買う。「生きたままでいいの? C50 でやってあげ
 るわよ」と言うので、しばし考える。「考えてみると、生きたままという
 ことは、自分で殺さないと食えないわけですね?」「イエス」「......うー
 む。ここはまあひとつ、やっちまってください」。それでさばくところを
 見せてもらったのだが、元気なやつを手掴みでバシンバシンのカパッとい
 う感じで、強烈であった。魚を刃物でスパッとやることはできるけど、甲
 羅を手でカパッはちょっとできんなー ^_^;)。

  それで用は済み、車を駆って宿に帰った。コーヒーを入れてカップを手
 に浜に出、一人で構図を考え抜いた芸術写真などを撮影。のんびりとして
 いい気分。もう今頃彼女たちは鯨の大群と出会って、目的地の露天風呂に
 向かっているだろう。


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  日が翳る前に宿の対岸にある小島へ歩いてきた。干潮のときは約 1km の
 砂浜が島までつながってしまうのだ。ただの岩場かと思ったら、なんと島
 のそこら中を小川が流れて小さな池が無数にできている。ガーン。タイド
 プールではなく、雨がとてつもなく多いからこんな小さな島でも水を貯え
 られて、川ができてしまうのだ。すげー。ここでキャンプしたいなあと思っ
 た。大波もこわいし、風と雨で大変なめに遭うだろうけど。その小島にわ
 たるまでのビーチを例によって川が横切っている。景色がすごいとかは思
 わないけどじっさい面白いところだわこの島は :-)。

  旅先で一人だというのはいいなあと思う。まあこれをあとで話せる相手
 がいるからこそ楽しいんだけど、自由に行動できる(あるいは行動しない
 でいる)ことのすばらしさ。超行動的なLDと旅行すると、どうしても彼
 女の脚を引っ張るという感じになってしまうしな。なにせ彼女はインド・
 ネパールを一人旅し、ヒマラヤにも登ったという子なのだ。


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  島のうえで、Mと日本へいつか帰ったとき、俺の好きな場所に連れて行っ
 たらどうなるだろうと考えていた。MTB もバイクも使えないので行ける場
 所は限られてるけど、廻り目平とか連れて行ってもヒトが多くてと言われ
 るかな。どこにいってもヒトのいる日本でバイクに乗って旅行することの
 楽しみのうちには、ヒトのいるところを訪問し抜けていくことに対する楽
 しさも絶対にあるんだけどね。

  今までお前たちとバイクで行ったところを思い出す。たとえば鬼怒川伊
 香保を抜けていったあのツーリング。日光近辺の地方都市や杉並木を見て
 和みながら走るあの感覚や、温泉街をふらふらする楽しさ。キャンプ場で
 うるさい人々にわずらわされながらも基本的にそれでもいいと許している
 感じ。山々を超えるたびに木の色花の色が変わり、茶店や小さな町がある
 楽しさ。あのサマーフィーリング。俺たちにとってはああいうものも、カ
 ナダの人里離れたハードな自然に劣るものではないよね。


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  夕方、ボートを迎えに港へ行く。もうほとんど人影はなく、海鳥たちば
 かりが鳴いている。ほんとに静かだ。やはりこういうのも実にいいね、非
 日常的なさびしさがあって。

  ボートが帰ってくる。舟上に見える二人のつかれて日に焼けた顔。どう
 だったかね? ワイルドなオルカには今回会えなくて、おとなしいグレイ
 ホエール(コクジラ)しか見えなかったとのこと。「でも温泉は気持ちよ
 かったわよ」。そうか、よかったよかった :-)。その夜はカニのばか食い
 宴、うまかった。醤油がほしかったが、島では日本製が見つからず。でも
 なにもなくても新鮮なゆでカニはうまし。


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  帰る日。まだ名残惜しいLDに連れられ、あちこちのビーチをチェック
 して歩く。歩く歩く、もうやだよというまで歩いた。俺は海はどこでもま
 あおおよそ海ではないかと思うのだが、LDは一つ一つ残らず見て歩きた
 いくらい愛してるようだ。

  レインフォレスト保護区も探訪。俺は海より森の方が好きなので、こっ
 ちのほうが楽しい。コースと歩くところを決められ、案内情報を読んで学
 びながら歩くのはそれほどわくわくせんけれど。俺たちが富士山でしてい
 たように、こういうところでこそ弁当を広げコーヒーを飲んでのんびりし
 たいよなあと思った。それが自然にダメージを与えるとも思えないし。自
 然の偉大さを学ぶよりも、よさをうれしく味わいたいのに。

  それにしてもカナダの州立公園にいると、富士山なんて同じようにすご
 い自然を持ちながらひとつも保護されてないなあとつくづく分かる。だか
 らこそ俺たちみたいのが自転車で入ってツーリングをできるのんきさが残っ
 てるわけだけど、同じように四輪駆動のRVが入ってボロボロにすること
 もできるんだよね。ハチが考えてる「森林警備隊」設立は、官庁の予算が
 下りず実現は厳しいように思うけど、自然保護気運のない日本にこそ必要
 なのだ。


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  あとはのんびりと帰るだけ。歩きがハードであったが、やっぱり旅行は
 楽しいね。お前も長野に帰ったら、どこか俺たちが子供の頃見つけられな
 かったいい場所を見つけて、お兄さん夫妻を連れてってください。長野の
 自然は土木破壊され続けてるけど、どこかに隠されたいいところがまだあ
 るかもしれないから。

  それじゃそんなところで、また。引っ越したいへんだろうが、俺の荷物
 の残りとちび猫をよろしく頼む。いや、よろしくお願いしますだと低姿勢 :-)。


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