【Soccer】ねえトルシエったらトルシエ

To: サッカー青年KBとサッカー女YK   ■□ オリンピック4試合を見終わってため息のトモです  メールを送っても紙の郵便で手紙とCDを送っても音沙汰ないので、連絡が ついているのかどうかすらもわからんのだがKB君、オリンピック4試合を見 ました。サンキュー。例によって感想を送ります。せめてこのメールが届いて いるかだけでも知らせてくれないか。YKさん、うちの子はおたくの姉妹も真っ 青なキカン気です。 ┏━━━┓  ┃南ア戦┃ ┗━━━┛  前半、おいおいトルシエさん、こんな試合をしに行ったのかねという感じ。 これじゃアトランタやWC98時と変わりないじゃないか。攻めてるのは高原 と柳澤の2トップだけ、単に弱いチームが5バックで守り、2トップに預けて 運を天に任せる試合をやっている。もちろんそれに時折中田が加わり、遅攻に なれば中村や稲本らが上がってそれなりのことはできるが、そこまで遅くなれ ば相手も十分に守り切れる。DFラインの横を相手に攻められ、かつ1対1で ことごとく負けている(南アのドリブルは半端ではないので致し方なし)から 両サイドが戻らざるを得ないわけだが、これじゃDFをもう一枚入れて4バッ クにし、中村を前に上げたほうがまだましなはず。  選手の動きは皆いいが、中田のラストパスがイタリアに行く前の受け手のな い赤瀬川トマソン型純粋パスに戻っている。これはどうしたことか。  後半、ラインを上げてパスをつなぐサッカーができて、やっと安心して見て いられるようになる。中田のパスの精度も上がりいいシーンが増えていた。日 本のラインが上がったため、南アの攻撃は攻撃開始時点がゴールから遠くなり、 そのおかげで守備も安定していた。南アの選手は自分たちの方がはるかにうま いのにと口惜しかっただろうが、これがサッカーである。最後は高原の美しい 斜め走りに中田の美しいスルーが入り試合が決まる。  そこから後の日本はすばらしい出来で、DFは氷のように落ち着いて相手の ボールを弾いて攻撃を止めてしまうし、本山はすばらしい突破でバシバシシュー トを打つしで最高だった。本山は本当にいい。ワンタッチでばしんと「蹴った」 パスを出す自分の技術への自信、DFの裏に飛び出すスピード、右でも左でも 小さく速い振りでシュートが打てる俊敏性(2発連続でシュートを打ったのに はしびれた)などなど、見ていて気持ちよすぎる。この日本の宝を使わないト ルシエにはなにを言ったらいいのだろうか。  個人ではハートの強さとタックルのうまさを見せてくれた森岡、DFながら ちゃんと攻撃の開始となるパスのうまさを端々で発揮していた中田コ、とにか く打てる限り打ちまくりいっときのカズ的ストライカーになってきた高原、サッ カーセンスの固まり本山が光っていた。中田は後半よくなって及第点、中村は 守備に走らされたので気の毒、稲本は致命的ミスを2発はやっていたので減点。 中澤は前半抜かれまくっていたが、後半は慣れて相手のドリブルを減速させて いた。きれいに止めていたわけではないが、要はほかの誰かがボールを取れるよ うに邪魔すればいいのであって、それで仕事が済めば問題なし。  問題の柳澤は、チャンスメイクは一生懸命やっていたが、1試合を通じてあ あいうちょい出しアシストしか思い出せるプレーがないFWというのはやはり あんまりなんではないか。シュートを打てるのに加えてあれができて初めて誉 めたくなるのが人情である。ボールを持ってゴールに向いたときのボールの持 ち方、体の動きや戦闘態勢に、シュートまで持ち込みそうな雰囲気すら見えな い。昔サッカー中年ハボがJリーグを見て「武田なんて俺でも止められるよ」 といっていたが(無理無理・笑)、今の柳澤にシュートを打たれるDFはJリー グでも少ないんじゃないかと思う。実際Jでも点を取ってないんじゃないか? 2年くらい前のオールスターではDFを抜きシュートを打つ切れはあったのに、 どうしたことか。この後のアジアカップにも選ばれてるし、城偏愛と共にトル シエ七不思議なり。 ┏━━━━━━━━┓  ┃日本−スロバキア┃ ┗━━━━━━━━┛  やはり南アという超絶個人技チームに打ち勝ったことで自信を持ち、この試 合はハナからセットプレー以外でやられるわけがないという顔をして日本の全 員がプレーしている。トライするプレーが順調に出ていて気持ちいい。ボール がどこに飛んでも中澤以外下手な選手がいないというのも気持ちいい(中澤の 役割は肉弾派とこっちも思っているからか、明らかに下手でもあまり気にならず)。  しかし中田のパスがなー。俺が見ていたセリエ1年目ではこんなにぶれるこ とはめったになかったのに。体は切れているしボールの持ち方運び方に狂いが あるようには見えないのだが、パスがなにしろ左右ともにあさっての方向に飛 んでいく。今ローマじゃベンチにも入れないらしいが、このパスが続いている のとすれば無理もない。どうしたんだろう。パスが思ったところに飛ばないと いう種類のスランプってあるんだろうか。  稲本が今日は落ち着いていてすべてのプレーがいい。彼はガチガチの当たり 屋というイメージがあるが、ほかの選手よりいつも1つ少ないタッチでボール を落ち着かせパスを出せるところがうまいなあと思う。ブラジル戦での惜しかっ たシュートも、打ったタイミングが俺が思ったよりも1つ速かったし。この稲 本に具体的な移籍話が出てこないのは、やっぱりベスト8くらいじゃ注目を集 めないということなんだろうか。ともあれ前半は膠着状態で終わってしまった。 どちらも攻め手がないという感じ。右に入っている三浦がぜんぜん仕事をして いない。なんで右だとあんなに駄目なんだろう。  後半10分過ぎからそろそろ点を取らんとと両者本気の攻めが出てきて面白 くなってきた。そこで高原1トップに切り替え。ここからは中村がゲームを作 る。中田はなにしろこのところパスがぜんぜん駄目なので、中村の正確なパス で日本の攻撃にエッジが立ってくる。柳澤はこの試合も黙々とチャンスづくり に徹していた。シュートを1つ自分で打ったのでやや前進しているかという感 じはするものの、全プレーで相手を脅かしている高原に比べると相当に物足り ない。高原は本当にすばらしい。よくあんなに走れるものだ。中山が中に入っ てるんじゃないかというくらい走っているうえに中山よりうまいのだからあり がたい。  アナが「ワールドクラスですね」という稲本のシュートが炸裂、GKに止め られたが美しかった。これもDFの予測より1タッチ少ないボレーシュートで あった。今日みたいに調子がいいときはインターセプトも決めまくるし、稲本 は本当にうまい。明神のプレーが華麗になっているのにも気がついた。やっぱ り周り中がこうテクニシャンばかりだと影響されるんだなあ。よしよし。  そして中田のヘッドで先制、完璧なカウンターからこぼれ球を稲本が決めて 2点目。どちらも中田が超うれしそうな顔をしているのがうれしい。だんだん つまらぬポーズが取れていい感じになってきてるんだろうなー。これでパスの 調子が戻ればローマでも無敵なはずなのだが。しかしこれだけパス精度の悪い 中田を最後までトップ下で使いつづけたトルシエの意図が分からない(※)。 こうして中村がいて中田をFWで使うという手が実際機能してるのに。なぜな んだろう。中村のフィジカルを信用してないのだという説が強いが、つぶされ ることもあれば交わしていいパスを出すこともあるのは、中村だけではなくど この指令塔でも同じではないか。マラドーナだってそうではないか(ちょっと 比較が極端だが)。    ※ 中田自身は『スペースがなかったのである。それでもチャンスを狙っ て無理に通そうとしたから、結果カットされる場面も多かったのである。 でも、安全なパスばかりをしたら試合は動かない。そういうときには、た とえ成功率が低くても、勝つために、やらなければならないときがある。 俺自身、試合後にビデオを見てチェックをしたが、確かに画面に映ってい る場面だけを見ればパスミスに見えるかもしれない。が、試合は画面に見 える部分が全部ではないのである!!』といっているが、そういう狙って通 らないパスではなくて狙ったところに飛んでいないのが問題なのだ。  その後猛然と攻めるスロバキアを止めてはカウンター、止めてはカウンター と繰り返してゲーム終了。カウンター用に入れた本山と平瀬は、2点目が入っ た時点ですぐに替えてやってほしかった。特に平瀬は4分じゃあせってあれ以 上のことはできないだろう。芝に慣れず転んでばかりいたし、自分がオフサイ ドになってるのに気づかず猛然と走りパスを要求している場面など、気合と鬱 憤がカーリーヘアから吹き出さんばかりなんだろうなと気の毒だった。あんな 使われ方じゃ、たとえ最後のシュートが入っていてもすっきりとはせんよね。 ┏━━━━━━━┓  ┃Japan-Brazil ┃(これはカナダTVでライブ観戦) ┗━━━━━━━┛  ブラジルのスタートラッシュに煽られオタオタして5分であっという間に点 を取られたのには鼻白んだが、前半の半分からはほぼイーブンに戻し、前半終 わりから後半全部は日本が攻めっぱなしであった。中村を筆頭に、チームの力 は十分に発揮していた。  がどうしてもフィニッシュに持っていけず負け。FWにしても三浦にしても、 あともう一つ力が足りずシュートが打てない。これは戦術とか精神面とは関係 のない、力の問題に見えた。中村がボールを持ったときに、受ける側にあとも う少しのひらめきと勇気があったら、もてる力だけでも点が取れたのだが。  シュートが打てないのは日本の実力だが、柳澤はやはりこれ以上の仕事はで きないだろうと思う。自分の力では抜けないと正確に判断してチャレンジをや めてしまうのだから、万に1つのチャンスすらも彼にはやってこない。相手D Fだって柳澤の力量は知らないから一気に詰めずに様子を見ていてくれている のに。やっぱり釜本など性格的に無謀でないと、FWは無理なんだろう。無謀 に攻められる平瀬か、可能ならば吉原を入れてほしい。ドリブラーがいないと、 このレベルではシュートが打てないのだと思った。 ┏━━━━━━┓  ┃Japan - USA ┃ ┗━━━━━━┛  試合開始、US は日本よりもはるかにしっかりプレスをかけている。一人一 人がボールを持つ時間が短く、オートマチックにさっさっといい感じでボール を回している。合理的でいいチームだ。誰がこんなにいいチームを作ったんだ ろう。CONCACAF オリンピック予選を見ればよかったな。  今日は中村のプレーがやや精彩を欠き(疲労か)、柳澤が中田らと絡んでい い仕事をしている。ストライカー的な仕事がまったくできないので不評を買っ てるわけだが、なるほど柳澤はこういう 1-2 パスを徹底した細々とした仕事 がしたかったんだなとよく分かる。最後になってそのためのコンビネーション が間に合ったのか、どうして柳澤があそこに落とすと中田は知っているんだろ うと不思議になるくらいにきれいにつながってチャンスを作っていた。  20 分、US のシンプルでしつこいプレーに押されている。US の寄せの早さ とセンタリングの速さはすばらしい。が押されつつも中村のセンタリングから 柳澤のゴール。ここから US が俄然アグレッシブ.....というかオフェンシブ (悪い意味で攻撃的)になる。手で突き倒すのはやめてくれ。とにかく走り ぶつかってくる USA、これは日本はきつい。サイドの中村と酒井は相当しんど いだろう。ボールを奪っても前線にいる人数が足りず有効な攻めができない。 厳しい展開。  しかしいくら US の寄せが見事だからといって、これでバカうまならともか く決定的な場面ではミスってくれるくらいの敵なのだから、トルシエが手を打 たずともパスの回し方を工夫するなどして選手だけで局面を打開してほしいな あ。それくらいのことができなければ、この後当たるはずだったスペインにな どとても勝てなかっただろう。後方からのパスがすばらしくいい中田コが怪我 で抜けたのが痛いなあと思う。  やや攻め疲れた US のペースが落ちたところで日本がいくつかいい攻めを見 せ前半終了。よし。US はまるでもう後半がないかのような、噛み付きそうな 顔でラフなプレーをしている。試合開始時の好印象は消え、ちょっとなあとい う気がしてきた。君らはそういうチームキャラクターなのかね。レフは噂通り US のラフプレーにファウルを取らないが、まあ世界にはこういうレフもいる よなという感じ。日本選手たちは落ち着いている。  前半一番光っていたのは柳沢であった。中田や稲本とのコンビネーションは 効いていた。得点したことは誉めるほどのことではないが(あれは中村の得点 で、あそこにいれば誰でも打てた)、とにかく自分がしたいプレーをここで証 明してみせたのは立派です。西澤のようにシュートが打てかつああいうポスト をやって初めて愛せるという感想に変わりはないのだけれど。 ----------------------  後半、US の寄せがさすがに衰え、日本のパスがつながり始める。双方何本 かずつチャンスがあったところで、20 分三浦投入。しかしさっきから US の FK を蹴ってるのがイヤな奴で、FK ポイントをどんどんゴールに近づけてしま うところがアルゼンチン的にいやらしい。このレフの判定はゆるすぎるだけで 公平にやってると思うが、こういうのは嫌だなあと思っているとその FK からコーナーになり、ミドルを決められ同点。くー。  が中村 -> 高原のすばらしいプレー一発ですぐに突き放す。よし。そこから 後は US がラフにパワープレーで攻めてくる。フィールド上のあちこちでガン ガンと倒される日本選手。これは US びいきだったとえらい騒ぎになっていた が、単にラフプレーをまるで取らないスタンダード不明のレフだっただけのこ とで、彼は US をひいきしてるつもりはなかっただろう。日本選手はラフなコ ンタクトをしないので、結果的に「US のファウルを取らない -> ひいきだ」 と見えたのだ。US 選手はこの時点ではもうほとんどすべてのレイトコンタク ト時ヒジを入れてぶつかってくる。日本選手は「レフが取らないんだからしょ うがない」と黙々と受け入れてプレーしている。少しは抗議すりゃいいのだが、 このへんがどれだけトルシエがファイトだファイトと叩き込んでもおとなしい 国民性で困る。  楢崎負傷するも続行。そして US のパワープレーが続き日本は押し返せなく なり、残り時間数分のところで PK となってしまった。くー。酒井は押しては いないだろうが(相手も興奮してはいなかったし)手で相手に触ってるし、ボー ル前に体を入れられた時点で負けである。今日は酒井が一番大量にボディコン タクトを受けていたので、体力もきつかったのだろう。そしてなによりも、チー ムがきちんと押し返さないからこういうことになったのだが、それは US の飽 くなき攻撃とボディコンタクトに、(楢崎の怪我が出たこともあって)日本選 手の気持ちと体が引いてしまったからだろうなー。このまま終わってくれと。 それは残念だが、レフの判定がああでは無理もない部分もある。 ----------------------  ここから先延長戦はカナダのTVでやってくれた。追いつかれたのは相手の 粘り勝ちだから仕方がないのだが、ここから先決定的なシーンを生みながら勝 ちきれなかったのは、こういう展開で守備力を落とさずフレッシュな脚として 投入できる選手を一人も連れていかなかった下ごしらえも含めて、トルシエの 采配に大きな責任があろう。が彼もこの大会からそれを学んだはず。トルシエ 自身も修行中なのだから。  延長前の休憩、トルシエが檄を飛ばしている様子はない。このままで行ける という自信なのか。西が一人一人の背中を叩いて激励している。いい奴だ。試 合に使ってやってほしかったと浪花節な心情が湧く。ゲーム再開、うわいきな り中村が肩を掴まれて倒され、すぐ後に今度は顔面を叩かれ倒される(この時 間はライブで見たときは流れなかった)。ゲームが完全に途切れるほどのファ ウルだったのに、これを取らないレフはいくらなんでも FIFA の制裁ものでは ないか。こういうプレーが続いては、まともなモーティベーションを保つのす ら難しい。  そして交代で脚力が残っている US はまだまだ走る。日本は脚が止まってい るがアイデアで打開しようとする。結果を知っていても、頼む平瀬か本山を入 れてくれと手に力が入ってしまう。中田-稲本-中村とダイレクトが決まり、が 高原が最後のどフリーをはずす、くー! しかしこのゲームの終盤を見れば、 たとえ疲れていても中村に真ん中をやらせたほうが、はるかに日本はいい攻撃 ができることが明らかに伺える。今日の柳澤はすばらしかったが、それでもな お中村がゲームを作り中田がFWで走る方がもっといいゲームになったろうと 思う。―――高原が粘って中田につなぎシュート! うーん何度見ても惜しい。 止めたGKをほめるしかないが、決まっていればスピードもコースもワールド クラスな中田の一発であった。今回中田が満場を唸らせたのは、南ア戦のスルー とこのシュートだけだったような気がする。その他のプレーは、非常にいい日 本選手というレベルを上回ってはくれなかった。  後はほとんど実質的なチャンスは生まれず終わってしまったわけだが、やっ ぱりどう考えても両者これだけ疲れているのに2人のサブを余して負けるとい う采配は、普通考えられないよなあ。最後まで中村と中田はプレーに絡めてい たのだから、元より脚が速くはない高原の代わりに平瀬か本山を入れるだけで、 どれほど相手を苦しめられたことか。それをしなかったのかなぜか分からない。 分からないったら分からない。本山を入れたらいったいなんのマイナスがあっ たのだというのだねトルシエ。ねえトルシエったらトルシエ。それを誰も尋ね もしない(「バランスを崩したくなかった」なんていうのは答えになっていな い)。ふぅぅぅ。通訳のフランス青年が泣いている。ふぅぅぅ。

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